2018年7月5日木曜日

ギリシャ旅行 エーゲ海クルーズ





 私たちが乗船したのは、この『るるぶ・ギリシャ』で紹介されているセレスティアル・オリンピア号だった。

 クルーズ船での食事は、朝昼晩、レストランで取る。コース料理を選ぶこともできるし、ビュッフェを選ぶこともできる。一番最初にコース料理を食べたのだけれども、その量の多さに呆れて(半分以上は残した・最後に出てきた何かのパイは皿一杯にあって、ほんの一口で下げてもらった)、以後はビュッフェを選ぶことが殆どだった。
 で、私は一人参加である。
 一人でレストランに行くと、入り口で給仕に捕まり席に案内されることになっている。一番最初、自分から ”Japanese” と言わなかったからなのだろう、訳知り顔の給仕の後についてゆくと東洋人の並んだテーブル席に案内された。最初のことだったので、中国人と日本人が同じテーブルに座ることもあるのだろうと私は自分で思い込んでしまった。後で知ったことだけれども、本来は同じ「民族同士」になるように案内することになっていたらしい。
 席を割り振ってもらってから、ビュッフェ料理を取ってくる。
 同じテーブルにいた何人かの東洋人は、明らかに中国語を話していたけれども、大陸中国人とは違って騒々しくはない、恐らく台湾人なのだろうと思った。
 食事をしていると、その中の一人の老人と目が合った。軽く会釈すると、
「あなたは日本人ですね」
 と向こうから話しかけてきた。
「日本語が話せるのですか」
 と私が応えると、
「源氏物語も松尾芭蕉も原文で読めますよ」
 と笑った。お互い名乗ることもなく、旅行のことをあれこれ話しているうちに、私も油断して、つい、こんなことを言ってしまった。
「最初ここに案内されてきたとき、大陸の中国人の人たちならどうしようかと思ったんですよ」
「どうして?」
「うるさくて食事になりませんから」
 彼は苦笑いして、
「あなたたち日本人が静か過ぎるんですよ。ところで、あなたは知らないんですか、このクルーズ船には中国人は載せないことになったんですよ。去年からだったか、その前だったかは忘れましたけれど、この船には一人の中国人も乗っていません。台湾人、韓国人、そしてあなたがた日本人だけです。」
「どうして……?」
 と言葉を漏らすと、向かいに座っていたその台湾人は嘆息するように顔を振り、そして説明してくれた。
「船会社だって経営がたいへんなんですよ。中国人のバカ騒ぎがどんなものかあなたも知っているでしょう。地獄ですよ。クルーズの評判が台無しになって、メインのヨーロッパ人の客が来なくなって、そして会社が潰れる、なんていうことを避けるのは当然のことじゃないですか」

 ということで、四六時中大声で喚き散らす大陸中国人はクルーズ船には乗っていなかった。しかし、サントリーニ島で2泊した〈4つ星ホテル!〉には中国人がたくさんいて、夜も昼も朝も、たとえ自分の部屋のベッドにいたとしても、耳元で騒いでいるかのようにホテル内を騒音で満たし、ホテルのプールサイドに、自分たちの大量の下着類を洗濯して干していた。「窓を開けたら、中国人のでかいパンツが真っ先に目に飛び込んでくる」と、旅の仲間が愚痴っていたけれども、これが現代のギリシャ旅行につきものの光景なのである。




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